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なぜか日本でだけ行なわれている「子宮全摘出手術」02

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なぜか日本でだけ行なわれている「子宮全摘出手術」

 ケース2 「出血はあるが、今は治療を受けたくありません」

   
『私が子宮頸がんと診断されたのは2年前で、40歳の時です。
   職場の人間ドックで要検査と告げられ、2008年8月から病院へ通うようになりました。病院では、「確かに異形が出ている。しかしそのまま正常に戻る可能性もある」と言われ、その後数回受診しました。そして「もうそろそろ経過観察もいらないでしょう」と言われていた矢先に、それまでとは違った少し重い結果が出たのです。そして翌年の4月に「がんです」と診断されたのですが、最初の診断は子宮体がんで、子宮全摘出の手術が必要だろうと言われました。

   先生が言うには、「がんは浅いが広い。3センチぐらい。浸潤部分は2センチ以下くらい。腺がんだと普通は子宮摘出。でもヴィログランデュラーなので円錐切除ができるかもしれない」と。それで私は「放射線での治療はできないか」と質問すると、「腺がんは手術と決まっている。手術の決定は会議にかけて癌研独自の方法で決まる。それが絶対なんです。そこで円錐切除ができないと決まればそれに従わないといけない」と。

   私は「慶応病院の近藤先生にも話を聞きたい」と言うと、それが先生の機嫌をすごく損ねたようでした。そして、「他の方法でするなら他へ行ってください。放射線なんてあり得ない。私の本は今度来るまでに読んでおいてください」「これから会議だから」、と立ち去ろうとしたので夫が引き止めると、「質問しても無駄です。もう何も出てきません」と言って先生は出て行ってしまいました。私は次の診察予約が入れてありましたがキャンセルし、画像や生検の資料は返却してもらいました。慶応病院へ行ったのはそのあとすぐです。

   近藤先生は、「がんであることは確かみたいだね」と言われました。
   「腺がんでも放射線治療はできる。このタイプは大きくなる可能性があるから、もしいずれ放射線治療をするのであれば、大きくならないうちのほうがいい」と。私と夫は、本物のがんでないかもしれないことや小さくなることを期待しており、「しばらく様子を見たい」とお願いしました。私にとって婦人科診察は特に嫌なことで、仕方がないと頭ではわかっていてもそれでも嫌でした。そのたびに結果に一喜一憂し、次の結果でがんが大きくなっていたらどうしようと怖かった。診察前になると眠れなくなることもありました。

   私が診察を受けていたのは、治療が云々(うんぬん)というよりは、自分があとどのくらい生きられるのかを知りたかったからです。でもそんなことはわかるはずもなく、相当進まないと困った症状は出てこないし、それまではずい分元気でいられるらしい。それに「あと何年」と分かったところで私はどうしたいのか。・・・。そんなことをぐるぐると考えながら、私はいつ死んでもいいようにしておこうと行動するようになっていきました。自分が死ぬことを実感できると、なぜか穏やかな気持ちになるようです。ですからお花見だって、今でも笑って見に行けます。

   2011年4月に、「もう婦人科診察はしたくない」と先生に話しました。
   そして診察をやめてから不安になることが少なくなり、病院へ行くことが嫌ではなくなりました。近藤先生のところで2年間様子を見ました。最初の診察の時より若干大きくなっているようで、1b2期に近いのではないかと。子宮頸がんの死因で多いのは、昔は大量出血か腎不全であり、私もそうなる可能性があります。

   「症状が出てきたらどうするか」と先生に尋ねられますが、私は今は輸血も透析治療もしたくはありません。痛みが出てきたらできる限り緩和したいですが、なるべく自然のままでいたい。これは治療の選択というよりも私の生き方です。私の希望を近藤先生も夫も大事にしてくれているのがとてもうれしい。今ある症状は不正出血ですが、自分で十分対処できる程度です。生理なのか不正出血なのか分からなくて、このままひどくなったら死ぬのかなあと思うときもありますが、いつも、なんだ生理だった、とほっとします。

   どんな治療を選ぶのかは患者が決める、ということは一般的に言われるようになってはきましたが、しかしそこには「治療しない」という選択は入れられてはいないようです。病気を否認しているだけだと言われたこともあります。でも将来、困難が生じる可能性も含めて何もしないことを選んでいるのであって、私は決して人生を放棄しているのではないのです。』

                           sun

 「もどき」でも治療したほうがいい場合がある

   
がんを「本物」と「もどき」に分ける基準は、多臓器への転移の有無です。
   転移があれば治らないからで、この点は子宮頸がんでも変わらない。ただ頸がんの「もどき」を放置した場合、がんが増大するとともに周辺の組織に浸潤していくことがあります。その結果患部から出血し、あるいは子宮のそばの尿管を閉塞することが死亡の原因となる可能性があるのです。(出血死や腎不全) というよりも適切な治療のなかった時代には、出血と腎不全が子宮頸がんの二大死因だったのです。それらの中には、転移のある「本物」も多々含まれていたはずですが、転移でなくなる前に出血や腎不全で亡くなっていたと考えられます。・・・。

   日本の子宮頸がんのスタンダード(標準治療)は、世界のそれとは大きく異なります。
   1b~2期の状態に対して行なわれる世界的な標準治療は放射線(単独)治療です。全部を終えるのに2ヶ月近くかかりますが、外来通院で実施が可能です。これに対し日本で行なわれる治療は、手術であり、広汎子宮全摘術です。これは子宮はもとより卵巣や卵管、子宮を支える靭帯やリンパ節など骨盤の中を広く切除する手術であり、合併症が甚大です。・・・。

   私の知るかぎり、広汎子宮全摘術を受けて「人生が変わってしまった」と嘆く女性が圧倒的多数です。しかもそれほどの負担を患者に与える手術であっても、治療の結果は放射線治療のそれと変わらないのです。そう断言するのは、臨床試験結果があるからです。イタリアで行なわれた試験では、1b~2a期の患者を2グループに分け、片方に広汎子宮全摘術、一方に放射線(単独)治療を行いました。その結果、両者の生存期間や再発率は同じであり、合併症については放射線治療の方が少なかったのです。(Lancet 1997;350:535)

   なお2b期以上では臨床試験の対象となっていません。
   これは欧米では、2b期以上の一般的な治療は放射線(単独)治療だからです。ところが日本では、2b期であっても広汎全摘術を行なう婦人科医が圧倒的なのです。しかもそれでも癌細胞は取りきれないために、手術後に放射線を骨盤全体に照射することになる。それでようやく放射線(単独)治療で行なったのと同程度の再発率や生存期間になるのですが、そうでなくても手術による合併症は甚大であり、放射線を併用したことにより状況は一層ひどいことになります。・・・。要するに子宮頸がんの手術は、手術後に放射線を照射することでようやく、放射線(単独)のみで治療した結果と同じになるわけです。それなら手術で全摘する必要はなく、最初から放射線(単独)治療にするべきなのです。

   イタリアでの臨床試験結果が出てから、もう15年になろうとしています。
   しかし日本ではいまだに1b期にも2a期にも、とにかく広汎子宮全摘術が普通とされているのです。しかも術後に放射線治療の使用頻度も高い。そこまで患者を危険にさらし、現実に数多くの合併症を作り出しているのです。なぜ日本だけが前に述べたような科学的根拠(エビデンス)を無視し、1b~2期の子宮頸がんに手術を行なっているのでしょうか? しかも(他の治療法をを提示せず)、患者に手術のみを勧めるというのはまさに犯罪的ですらあります。広汎子宮全摘術を続ける婦人科医たちは、医学的良心をどこかに置き忘れているのではないでしょうか?

   本ケースでは、患者本人は子宮全摘出を嫌がっていました。
   外来でのやり取りを見ると、担当医は子宮全摘出に同意させようとすると、別の病院へ行ってしまう可能性に気づいたようです。それで子宮温存の可能性を匂わせて入院させ、そのあと医者やナースの側から説得、脅迫し、子宮全摘手術に持っていけばよいと考えたように思われます。このような病院側の真の意図を隠した入院の勧めは、どのような臓器のがんにおいても見られる現象です。

   一度入院してしまうと、自主退院するには大変なエネルギーがいるし、医者探しを一からやり直すのは手遅れにならないかと心配になるものです。それでたいての患者は医者の言いなりになってしまい、当初は希望しなかった手術を受けさせられることになるのです。ですから患者や家族はよくよく気をつけることが必要です。患者本人の考えや気持ちなどは尊重しなければなりません。



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