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日々、鍛錬する人々  ①

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日々、鍛錬する人々  ①

序文  カルロス・カスタネダ

タイシャ・エイブラーはドン・ファン・マトゥスの指導の下、メキシコ出身の呪(霊)術師たちから入念なる訓練を施された、3人の女性からなるグループの1員である。私は彼の指導による自分自身の訓練については詳細に記してきたが、タイシャ・エイブラーが属するこの特定のグループに関しては1度も記したことがないばかりか、ドン・ファン指導の下にある他の仲間の間においても、この3人については一切口にしないというのが暗黙の了解となっていた。我々の時と場にふさわしい状況が訪れた今、タイシャ・エイブラーが自ら受けた訓練について記述することが可能になった。それは私が受けた訓練と同じではあるが、まったく異なってもいる。

ドン・ファンの世界では、指導を受ける者たちが有する基本的資質に応じて、”夢見の人”と”忍び寄りの人”というグループに分けられていた。夢見の人とは、夢をコントロールすることによって、高められた意識状態に入り込む才能を生来的に持っている霊術師を指す。一方忍び寄りの人とは、生まれつき現実対処能力に恵まれており、自らの行為を操作・コントロールすることによって、高められた意識状態に入り込める霊術師を指している。そしてタイシャ・エイブラーは、忍び寄りの人たちのグループに属し、その人々から訓練を受けた。この本はタイシャ・エイブラーが忍び寄りの人として受けた、驚くべき訓練の記録を伝えるものである。

はじめに

私タイシャ・エイブラーは、人生を厳格な鍛錬の実践に捧げてきた。
他にふさわしい呼び名がないために、私たちはそれを呪術(霊術)と呼んでいる。私はまた人類学者でもあり、その分野においては博士号を取得している。しかし私の場合、呪(霊)術を学ぶ者として後に人類学を学んだのである。60年代後半、21歳だった私はアリゾナのグラン砂漠で1人のメキシコ人の女性と出会った。彼女の名前はクララと言った。その後彼女は、多大な努力を払って私を彼女が属する世界へと招き入れたのであった。クララは女呪(霊)術師であり、16人のメンバーから成る一致団結したグループの一員であった。そのうち何人かはヤキ・インディアンであり、年齢もさまざまな男女であったが、しかしほとんどは女性であった。

それらの人々全員が、真摯に同じゴールを目指していた。
それは私たち人間を日常世界の限界の内に閉じ込め、他の知覚可能な世界へ入り込むことを妨げている、自らの知覚の性質と偏りを破るという目標を目指していたのである。そのような偏った知覚の性質を突破するということは、想像を絶する彼方へと飛び込むことを可能にしてくれるものである。”ナワール”と呼ばれる私のグループのリーダーは、私に明晰な思考能力を伸ばすことを要求した。私は1女性として更に大きな責任を負わされた。その理由は、一般的に女性というものは幼少時から他人に従うことを要求されるため、自らすすんで概念的思考を発展させたり変化を引き起こしたりすることを、社会の男性にまかせるように条件づけられていることにある。

私を教育した呪(霊)術師たちは、この点に関して非常に確固とした見解を持っていた。
女性が自分を取り巻く世界をよりよく理解するためには、知性を伸ばし、分析能力と中抽象能力を高めることが不可欠であると彼らは考えていたのだ。私の学びは進み、やがて自分が生れ落ちて以来、女性として社会生活に適合させられてきた日常生活から引き離されることになった。そして、そうでなければ通常の世界が私のために用意してくれていたものよりも、より壮大な知覚の可能性を持つ新しい天地へと運ばれていったのだ。

しかし呪(霊)術の世界へ参入したからといって、それだけで成功が約束されているわけではなかった。この日常世界の引力は非常にしつこくて強力であり、実践者であればわかるが、いかに倦(う)まずたゆまず訓練を重ねていたとしても、いとも簡単に実は何も学んではこなかったかのように、救い難い愚かさや耽溺(たんでき)、恐怖心に何度も繰り返しはまり込んでしまうのだ。一瞬一瞬を、たゆまぬ努力を重ねることによってのみ、「変わりたくない」「このままでいたい」という、もっともで人を無感覚にさせる固執を清算することができる。

この本の中で語られている数々の出来事は、”忍び寄りの人”が受ける訓練の初期段階が描かれている。この段階では、習慣的になった思考様式や行動パターン、そして感じ方を、「反復」と呼ばれる伝統的訓練によって浄化しなければならない。教わったことすべてが目指すゴールは、自らの持てる通常のエネルギーの扱い方とその拡張である。「反復」によって、自らのうちに蓄積されている古い習慣や思考、記憶、感情といった強制的なパターンの枠組みが破られるや否や、人は教えが提供する新しい原理に従って生きるようになり、異なった現実を直接認識するようになり、必要なエネルギーを確実に蓄積できるようになるのだ。


book 『呪術師の飛翔 未知への旅立ち』 タイシャ・エイブラー著 コスモス・ライブラリー

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